2.「かもめの会」について~北茨城市におけるグリーフケア活動

東日本大震災被災者支援、取組の経緯・報告(2) 2011.10~2012.3

はじめに

 「かもめの会」とは、北茨城市商工会と本学会が共同で展開するグリーフケアの集いのことである。北茨城市とその近隣を中心とする被災者支援を目的に、2011年の10月に始まり、今年の3月で6回を数える。商工会が行う、被災された方の生活支援として各戸を巡る行商活動にあわせ、会の乗船を行う。この地は、緊急仮設住宅が市内の各所に点在しているため、被災者の連携や情報の提供に課題を持つ。そこでこのような方法をとらざるを得ないのだが、商工会の木幡和雄氏、鈴木梢氏らの努力には頭が下がる思いである。

 認定カウンセラーは、2~4名からなるチームが、月に一度現地に出向き、商工会館を集会所がわりに、グループのファシリテーター、スタッフとして運営にかかわる。いわば認定カウンセラーのデリバリーである。

1.認定カウンセラーとグリーフケア

かねてよりグリーフケアに関心を持つ認定カウンセラーが集まり、そのあり方について検討していた。その結果、人間の持つ治癒力を信じそれを活性化すること、そのためには当事者同士の相互作用が効果的であろうということから、「死別の悲しみをわかちあう会」を展開することとなったのである。最初は、認定カウンセラーのうちグリーフに関心を持つ者を、次には、認定カウンセラー全体をというように規模を拡大し、2011年度からは、カウンセリング学会員全体を対象に行っている。

  その最中にこの度の大震災が生じたのだが、被災者支援において結果的に、この積み重ねがプラスに作用したと考える。もちろんグリーフケアは、マニュアルや経験を優先させるのではなく、そのつど真摯な態度で誠実に対応することが必須であるが、これまでの学びと実践を通して、グリーフの本質やグリーフケアの留意点、グループ運営について身についた理解がなされていたことは大いに役立ったのである。

2.北茨城市とのかかわり

商工会の藤島匠氏から筆者に講演要請が入ったのが始まりである。すなわち、ジ地元の経済、産業を活性化するためには、困難を経験している「人」の支援が焦眉の急であると判断した商工会が、グリーフケア講座を設定したのである。参加された方の疲弊したご様子から、単発の講演ですませることに不安を覚えていた筆者に、商工会より、参加者がグリーフケアを求めているとの連絡があり、協議した結果、「かもめの会」を行うことにした。なお、そもそも商工会がグリーフケアに着目した背景には、すでに認定カウンセラー武藤幸枝氏による行商に同行するなどの誠実な支援活動があり、それを商工会側が高く評価していたということがあった。ちなみに「かもめ」は北茨城市の市の鳥で、嵐に立ち向かう勇気を持つことでも知られている。

3.理念

 会は、土曜日の13:00~16:00、ファ知りテーターの進行で、自己紹介や近況報告から始まる。BGMを使用する、導入としてコラージュを展開する、アロマによるリラックス効果を図るなど事前に進行を想定して臨むが、冒頭の一人一言の時点で思いを語る方などもいて、臨機応変で柔軟な対応を心掛けている。要は参加された方が、来てよかった、3時間が瞬く間だった、また次も話してみようかと感じること、そのための

安心で安全、そして自由が保障される居場所として機能することが肝要であり、運営する側の企画などを優先させてはならない。その理由は、グリーフケアは、名に御おいても尊重すべきは当事者の尊厳であり、それは、当事者の決定を見守り寄り添うということで可能になると考えるからである。

 地震、津波、原発さらには風評被害が生じていることは徹底的に理不尽なことであり、そこには被災された方の意思など微塵もない。そこで会では、徹底的に参加される方の意思を尊重することで、失われた尊厳が少しでも修復することを願っているのである。「誰のため、そしてなんのためか」ということを見失うことなく、カウンセラーの自己満足に陥ることなく、常に自戒し続けていくことを基本理念としている。

4.今後に向けて

 商工会より、2012年度は通年の事業として継続したいとの連絡が入っている。ありがたい提案であると同時に、参加されない被災された方へどのように呼び掛けるか(アウトリーチ)や、最近増えつつある個人カウンセリングの対処をどうするか、地元商工会の独自活動とするためにはどうしたらよいかなど、山積する課題を前に身が引き締まる思いである。最後に、これまで担当した認定カウンセラーは、安間亜佐子、荒川孝一、深谷真理子、水田聖一郎、笈田育子、田丸裕子、束田恭子、鈴木康明であるが、今後はメンバーの拡充を考えたい。

取組みの経緯・報告(2)2012.3.15

鈴木康明(東京福祉大学)

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